私が診断を受けたのは働き始めてから
思考が真っ白になって「どうしよう、どうしよう」と
頭を回転させるけど空回りするだけで、何も進展せず思考も行動もフリーズ
ちょっと仕事が忙しくなると動悸が激しくなる。呼吸が苦しくなる
何度も繰り返すミスの指摘で情けなさに涙がこぼれる
*
薬を使い始めて、職場のトップは知らないけど、スタッフさんは当事者性を知っててくれて
思考が真っ白になる事も、頭の回転が空回りする事も無くなった
忙しくなっても動悸は激しくならず
ミスの指摘も、結構しんどくなってる時で防御力が弱っている時、指摘が叱責に受け止めてしまう時にも
「これ、薬を使っていなかったら泣いている」と感じ取れるくらい
感情を遮断して、涙を寸前で止めてくれる感覚がある
体力が保たず薬の副作用に負けて情緒不安定に陥るのか
生来の私のネガティブ思考癖か
時々は壊れるのだけど
概ね、薬を使ってから感情の起伏は穏やかで安定している
感情をフラットにしてくれる
通勤途中
雪が積もっているだけで、その風景をスマホで大人が撮るくらいには、ここでは珍しい積雪の日
小さい一軒家を取り壊された後の、何も無くなった土地で
スマホを触りながら縮こまっている母親、その隣に2~3歳くらいの女の子、ちょっと離れた所で雪遊びをしている5歳くらいの男の子2人が居た
少し手前あたりで、自転車で通り過ぎようとする私に気付き
私の方を見ながら、片手で自分の母親を引っ張り、片手で私を指差しながら「ま~ま!」と、女の子が私の存在を報告する
右ハンドルから手を離さず、親指以外の4本の指を真上に上げて左右に振る
頬が真っ赤な女の子の顔が「にぱ~っ」と満面の笑みを浮かべた
ゼロコンマ数秒見惚れてしまい、見惚れている間に女の子の横を通り過ぎ、視界から彼女が消え前方を向く私
何の感情も湧かないまま「可愛い」の単語だけ浮かんできた
加えて、「子供を持つって、なんというか、味変?一粒で3度くらい美味しい」と子供を持つ事への質問に回答していた女性の文章を思い出す
自分の人生に対して複合的な視点が生まれるらしい
自分が子供の時の気持ちや、親の気持ちが視点として入ってきて、自分の人生が立体感を持って立ち上がる…のだとか
ここに一定数の、子供を持つ事への価値を感じる人は居るんじゃないか、と
立て続けに、発達/発育のタイミングって人それぞれなんだよ~…という事の具体例を
嬉しそうに喋っている、お世話になっている支援者さんの姿も脳裏をよぎる
「ああ、やっぱり俺の子供だなぁと思ったんだけどさ…」と我が子の成長を噛み締めている様子が見てとれて
子育てに関してはネガティブイメージが相当強いのだけど(孤独の当て字の「孤育て」etc..)
<プライスレスな価値がもちろんある>と何処か遠くへ飛ばされていた認識が手元に戻ってきていた時間だった
女性の文章と嬉しそうな様子の彼が、頭から消えた後
薬局に精神疾患の薬を貰いに行った時に目が合った、小学校低~中学年くらいの男の子を思い出す
とても狭い薬局
新幹線の座席みたいな、同じ方向を向いているソファの配置
スマホを触りながら薬剤師の方に呼ばれるのを待っていると、ふと視線を感じて顔を上げる
背もたれに隠れるようにして、頭と目だけ出してこっちをジッと見る男の子
視線がぶつかってしまい、すぐにヒョイと隠れてしまった
私はまたスマホを触りだす
…また視線を感じる
今度は露骨に顔を上げずに、背筋を伸ばして視野を広く持つ
男の子がさっきと同じようにジッと見ているのを視界の端で捉えた
今度は、ちょっと首を傾けて、マスク越しではあるけど微笑んで…目が笑うようにして
手を振ってみせた
そしたら数秒、同じ体制で私の方をジッと見ていて
今度はジリジリと身体を沈めながらソファの中に隠れていった
そうこうしていると、彼の母親らしき人が薬の受渡しの場所に呼ばれ、私も十数秒後呼ばれる
彼女の横を通り過ぎて、その隣の仕切り1枚隔てた受渡し場所へ
通り過ぎる時、私が使っているモノと同じ精神疾患薬が視界の端に映った
自分の薬の説明を受けながら、仕切り1枚向こう側の会話で「子供さんに投与するので…」という言葉が耳に飛び込んでくる
「必要なの?」「それぞれの事情に口出しするな」という言葉が同時に胸に浮かんでいた
*
こんなに色々と思い出してしまうという事は、私は相当あの女の子の笑顔にやられている
自分に起こった出来事のはずなのに、まるで他人事のような認識をして
淡々と、どうして色々思い出したかの分析をする私
かつての私だったなら、どんな情動が伴って、どんな感情を抱いていたのだろう
追求する気が一切無い疑問が湧く
ちゃんと発揮されている薬の効果
感情の起伏は穏やかで安定している
感情をフラットにしてくれている
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